『EDGE』 独特の不気味さが魅せる世界の結末 -読書感想
ジャンル:サイエンスホラー
アメリカで発生するした失踪
πの数値の変化
宇宙観測での異変
今後を展開を期待させる、そんな要素が散りばめられ始まる本作
最愛の父が失踪した過去を持つ、フリーのジャーナリスト 冴子
彼女が、静岡県高遠で発生した一家失踪の調査に関わったところから物語は進む
不可思議な失踪事件というのは、今も昔も心惹かれるもので
2ちゃんねるなどで、そういったスレをよく読んでいていた僕は一気に惹き込まれてしまった
特異な失踪事件がただ重なっただけと思いきや、そこに法則性があるらしい事が浮かび上がってくるところから
一気にエンジンが掛かってく。失踪事件と冒頭で提示された伏線がどう重なっていくのか?
上巻と下巻を跨ぐ、100人もの人間が1度に失踪する大事件を機に
ストーリーは大きく転換する
本作は一貫して科学的な要素が下敷きになっているけど
上巻は、霊能力者が登場したり、失踪現場に立ち会うシーン、冴子に訪れる影や予感などはどちらかと言えばオカルト的な面が強い。
ホラー小説を読んでるなぁと思わせる
下巻からは一転して、科学的な面が強く顔を出す。本作で描かれる現象の正体と結末について、一気に読ませる勢いがある
ジャンル的には終末系になるのだろうか
上下巻を通して読んできた人物達、それぞれの顛末は、何故かサイレン2の分岐エンディングを思い出す。
鈴木光司の小説を読むのはループ以来かな。その時も、SF的な科学要素が詰め込まれていたけど、本作は、更にリアル寄りな感じを受ける。
子供にやたら物理とか自然を解説する父親も
共通点か
この世界の相が転移する結果、我々の世界を支える常識や法則が崩壊し消滅してしまうとう
中々スケールの大きな話は、普通のホラーを期待すると肩透かしかもしれない。
全編に漂う雰囲気はとても良い。
結末について
本作の登場人物達は、世界が消滅する間際に現れる、ワームホールによって脱出していく
主要人物である羽柴達のグループが、ワームホールで飛ばされる先がマチュピチュであり
それがマチュピチュの謎の一つである、住民がマチュピチュを去る際に残された遺骨(犠牲者)の正体であるという示唆は
この手のループもののバッドエンド的なオチとして、とても好きで、ホラー感もありゾクゾクした。
しかしその反面、冴子に関しては、破滅の可能性の高い羽柴に対して啖呵をきった割に
ワームホールを抜けた後の世界で、赤ん坊としてもう一度父親の子供として生まれるという
これもループものの定番ではあるとはいえ、正直がっかりした。
ワームホールを抜けた世界がどんな世界かは明かされていないが、現状一番良い目にあっているからだ。
多少不気味に感じる事は出来る部分も、好意的に見ればなくはないが
本作のような展開をして、1人勝ち感のあるこの終わり方は個人的にイマイチだった。
おわりに
序盤の失踪事件から始まり、最終的には宇宙の消滅まで辿り着く壮大な内容だが
全体に漂う、どこか薄暗い雰囲気がとても良く、特に謎が少しづつ明らかになりそうな中盤辺りは
ホラーとして、科学とオカルトの混ざり具合が絶妙だった。