カラス屋の双眼鏡 世界の見方をちょっとだけ拡張するヒント
内容紹介とレビュー
ジャンル:エッセイ
生物行動学者である筆者の
日常の出来事や
過去から現在に至る
動物との触れ合いや研究について
様々なエピソードが短編集のように
収録されている
[良かった点]
- 生物行動学者の研究の一部や、ちょっとした日常、思考の一端に触れる事が出来る
- 自分の周りの世界に対する視野が広がる
- 動物についての知識がちょっと増える
[気になった点]
- あまり専門的であったり、突っ込んだ内容には言及されていない。あくまで、エッセイ
- 本文の書き方に好みが分かれるかもしれない(話し言葉なので)
- ~という事があった、という物が殆どなので、きっちりした結論はない
感想
[生物の持つ合理性と機械的な行動]
本書を読んで特に印象に残った部分
本文中で紹介されているコマチグモは
母グモが卵の孵化するまで寄り添い
その後、自分自身を生まれた幼虫の餌にする
また、鳥類は孵化前の卵が割れてしまったら
それを速やかに食べ、栄養源に変えるという
どちらもエネルギーの循環と
見れば恐ろしい程に合理的であるが
ちょっと感覚がついてこない
また、これも本文中で紹介される
ジュウシマツはプログラムされて
とでも言えるかのように
求愛→巣作り→産卵というような
手順を踏んで子育てをするし
その手順が少しでも妨害されると
子育てモードはリセットされてしまう
という。
これらの、まるで機械のような行動を見ると
生物は全て神にデザインされた~などと
言う慈愛に満ち満ちた人達の仲間入りをしてしまいそうな気持ちになるぞ
[意識を少し変えるだけで広がる世界]
普段何気なく通っている道にも
いつも死んだ魚の目をして歩いている
職場までの道でも
よく考えたら色んな鳥がいるな
という気持ちを思い出す
それは僕がそういう視点を
無くしていたからであり
彼らはずっとそこで各々の生活を
続けている
それに改めて気付くきっかけを貰った
気分だ
そんな気分で眺めているけど
カラスとは全然出会えない
なぜ
[まとめ]
本書は生物行動学者のエッセイとしても
充分に面白い。
だが、その内容をヒントにしつつ
自分の視野を、世界を広げるという事も
出来る1冊だと思う。
偶然にも読んだ時期が今、春というせいか
生き物に溢れる世界をより感じる事になった
単純な頭で良かった。
また、冒頭の日常の一コマから始まり
現在~過去に至るまで様々なエピソードを
経た先に、また日常の一コマへ帰ってくる
という構成が一つの纏まりを感じるし
個人的にそういう構成が好きな事もあり
爽やかな気持ちで読み終える事が出来た。