FBI心理分析官 異常殺人者達の素顔に迫る衝撃の手記 -読書感想
内容紹介とレビュー
ジャンル:ノンフィクション
FBI捜査官が全米の凶悪殺人犯との
面談や事件捜査への参加を通して行った
調査・分析の記録
良かった点
- アメリカの連続殺人事件を通して、殺人犯の心理を窺う事が出来る
- 各事件の概要と犯人についても詳しく
- 筆者の冷静で、あくまで事実を基に語る姿勢
- 素人にも分かり易く読み易い
気になった点
- グロテスクな内容の事件が多い
- 構成的には似たような流れの繰り返しである
- 本書の性格上、劇的な展開などというものはない
感想
[深淵を覗く]
本書に、登場する殺人犯は多種多様で
その犯行手口、動機、経歴、思想など
多くのページが割かれている
その内容を通し、かなり間接的ではあるが
殺人犯の内面に触れる事が出来る
それは明らかに常軌を逸したものから
幾分同感出来る動機が出発点なものまで様々
しかし、凶悪事件を扱う本書の仕様上
どれもこれも強烈な狂気を発している
その狂気に直に触れてきた筆者が
胸に刻んでいたのが
件のニーチェの言葉であるのは
実践に基づいた説得力しかなかった。
[調査と観察の積み重ね]
発生した事件と犯人の解説と
犯人との面談を含む調査経過とまとめ
本書はその積み重ねだ。
しかし、それでも不謹慎であるが
犯人の数ほど、事件や手口も個性を
帯びており、飽きさせてくれない
その中で明らかになっていく
- 幼年期の劣悪な家庭環境や虐待
- 殺人へと導く空想の変遷
- 秩序型と無秩序型の分類
などなどの傾向や共通点
本書の初版は1994年との事だが
現代でも活用される知識が
既に見出されている事に驚きと歴史を感じる
[犯人の処遇と死刑について]
最後に、筆者は本書に登場するような
凶悪殺人犯を死刑にしておしまい、ではなく
隔離施設に監禁しながら今後の調査に
役立てるべきとの意見を書いている。
恣意的な見方をすれば
殺してしまうより教材として役立てるべき
という、ある意味合理主義の局地のような
考え方は新鮮でもあり、ある意味死刑よりも
犯人を人間扱いしていないような気も
するのは気のせいか
[まとめ]
本書は事件や犯人に対する調査と研究に
大きくページが割かれており
それが、ただの連続殺人事件名鑑で
終わらない所以でもある。
収録されている事件は結構ハードなものが
多いが、凶悪殺人犯の心理に触れる
という意味で、読んでいて面白かった。
筆者はニーチェの言葉を掲げているが
本書内では、深淵の側にいるような面が
見え隠れしているのが何とも言えない。
[余談]
解説にて触れられているが
凶悪殺人事件(日本で言う快楽殺人)の犯人は
圧倒的に白人が多いらしく、実際に本書で
取り上げられる事件の犯人も白人男性だ
様々な面で世界をリードしてきた白人に
そんな猟奇的な悪因が密かに備わっている
としたら、少し出来過ぎていないか