私の家では何も起こらない その屋敷では、死が穏やかに流れる -読書感想
内容紹介とレビュー
ジャンル:ホラー
過去にそこに住んだ人間が次々に死んだ
そんないわく付きの幽霊屋敷の物語
人物へのインタビュー形式、会話
独り言といった書き方とオムニバス形式で
語られる死の記憶
良かった点
- 1話1話がちょうどいい長さでサクサク読める
- 各話が少しずつリンクしている面白さ
- 穏やかな文章なのに垣間見えるホラー
- 筆者の幽霊に対する考えが面白い
- 幽霊話一辺倒でない、バラエティに富んだ構成
気になった点
- グロとか強烈なホラーを求める人には向いていないかもしれない
- 登場人物の、会話や独り言が中心
- 明確な怪異の正体や原因は語られない
感想
[死の積み重ね]
本作に収録されている内容は
バラエティに飛んでおり
その分の様々な死を目撃する
犠牲となったの者の主観的な話
事件を伝聞で知った者の客観的な話
基本的にはこの二つの視点から語られる
様々な出来事があるが
それぞれが次の話や別の話に登場したり
関わっているので、全体的な統一感がある
個人的には『俺と彼らと彼女たち』という
屋敷を修理しにきた大工の話が特に好きで
この話のおかげで、本作のホラーだけでない
また違った面を見る事が出来た
逆に『我々は失敗しつつある』という
話はちょっとよく分からなかった。
この話がどんな事件・内容を示しているのか
読み込みの甘さか、イマイチ掴めなかった…
やはり、最初は頭から順番通り読むのが
オススメか
[家という時間と感情の交差する場所]
本作の内容もさる事ながら
筆者の幽霊に対する考えも面白い
「過去にそこに住んでいた人の思い出や生の記憶が、時間のズレや何かでたまたま現れたもの」
「家はこれまで何年何人もの人が暮らしているし、そういった意味ではこの世に人が住む家は全て幽霊屋敷」
というような考えがあとがきや
収録されている対談で披露されている
[まとめ]
本作は、ある屋敷に関わった人々の
死に様を見ていく事になるが
それに不思議と重さや辛さはなく
むしろどんどん読み進めてしまうのは
どこか良い意味の軽さがある文章も
手伝っている
とは言っても、そこはホラー小説で
やはりどこか不気味であるし
読み進め、死が積み重なる度に
嫌な感じが、じわじわ効いてくる
定番の幽霊屋敷ものとは一味違うが
それ故の怖さと面白さがある
そんな一冊