科学 vs.キリスト教 世界史の転換 普遍史という異界を歩く
ジャンル:新書、歴史
概要:17世紀から19世紀に欧州で語られていた歴史と
それが今日の世界史になるまでの流れを見る
内容紹介
19世紀まで欧州で支配的であった
普遍史(universal history)から
世界史(world history)への転換に至るまで
各年代の主要人物と、その著作品
また、時代背景を併せて解説
19世紀までの近代化されつつ
どこか異界感が漂う世界を見る事が出来る
科学や聖書等の知識がなくても楽しめる反面
解説パートが主となっているので
説明的な文章量はやや多め
感想
[この人達は何をやっているんだ…?]
本書に登場する様々な
当時の最高峰の頭脳を持つ人達が
日々発見される新事実を必死に
普遍史へ擦り合わせている姿を
見る度にそんな感情か生まれる
[普遍史とは]
旧約聖書の記述にある出来事を
「事実」として構成される歴史観
例えば
といった事が全て事実とされている
しかも、これが当時の欧州での
共通の歴史観というのに衝撃を受ける
所謂、マジ???ってやつ
[それでも普遍史はあるんだよ!]
本書では入れ代わり立ち代わり
様々な人が普遍史を維持するために
素晴らしいアイデアを魅せてくれる
- 天地創造の1日の時間は我々のそれとは違う、いくらでも拡張可能な(1日を1千万年とする事すら出来る)、ニュートン時間の導入
- ノアの方舟洪水の水源を地球の深淵に求める思考の旅
- 中国の歴史の長さを組み込むために、ヨーロッパからインドまで流されるノアの一族
- 同じくエジプトの歴史の長さを組み込むために、巨大王朝が同時多発的に乱立する構想を見出す
等々…
(もうそんなもの投げ捨てて
しまえばいいのに…)
そんなメタ的な気持ちすら浮かんでしまう
しかし、彼らの普遍史に対する姿勢は本気だ
なぜなら、自分達が真実としてきた
歴史が掛かっているからだ
[歴史の転換について]
今まで世界史の世界で生きてきて
ある時からいきなり
それを裏付けるような発見が次々とされ
「やっぱり世界史って間違いみたいだから
これからは普遍史時代」
なんて結論が出そうになったら
さすがに
「いやちょっと待ってくれよ…」
と思ってしまう。
自分の信じていた歴史が転換するって
こんな感じなのかもしれない
更に普遍史については
その人の神に対する認識や
信仰も絡んでくるので
より一層複雑な事態に…
信仰が強ければ強い程板挟みという地獄
(個人的に、特にキリスト教徒の
なんでも神ありき思想には辟易する)
[まとめ]
歴史は客観的な事実と証拠、発見が
積み重なり検証されてくけど
しかし、個人的な領域では主観的な
部分がかなりを占めているのではないか
そういった中で普遍史を巡る流れは
一つの戦いであり、その転換の
歴史は興味深い内容であった。
また、本書は普遍史の他にも
17~19世紀当時最先端の
宇宙の構造や地球の生成過程
ヒトと猿の分類にも章が設けられている。
特にヒトと猿の分類では
ヒトの亜種、近縁種に
居穴人、有尾人などが一緒に
記載されており
そういったところでも、当時の
台頭する科学と異界の境界のような
雰囲気を知り楽しむ事が出来る