アトロシティー 玄関から入ってくる狂気と暴力
ジャンル:ミステリー
あらすじ:三鷹市で発生した親子餓死事件を追うフリーライターの主人公は
隣人の訪問販売のトラブルの仲裁に入ったことで
さらなる事件に巻き込まれて行く…
以下感想のようなレビューのようなもの
三鷹市の母娘餓死、訪問販売連続殺人事件
この二つの事件を、公式のあらすじで知った時
わくわくでした。
すごく、現代ぽさに溢れていると
しかし、そんな要素を含みつつ本書はまた違った世界に進んでいく
「ネタバレをやや含む感想」
主人公のフリーライターが二つの事件に翻弄されながら進む本作
その語り口は、リアルで実在の人物のようでもある。
本作は巻末の解説が指摘しているように、エグい描写の多い
エグミス(エグい+ミステリー 解説ママ)である
それは事件の描写に関して顕著で
読んでいて、しんどいところがあった。
しかし、事件が1歩1歩進展していく様子と
主人公の環境に変化が訪れる感覚が絶妙で
読み進めてしまう。
-脱線①-
本書で一つの核である、違法訪問販売
訪問販売、よく考えるとひどく恐ろしい現象のように思える
見ず知らずの他人を玄関に迎い入れる行為
もし、そいつらが殺人も厭わないような連中であったら?
本書では、その疑問の答えを一つ明確に示してくれる
高額請求であれぱまだいい(実際は良くないけど)
不用意に玄関を開けてしまった
それだけで暴力の餌食となってしまう
今では一つと形式として認識されている訪問販売
それも、ドア一つで外の暴力を辛うじて防いでいるに過ぎない
-終わり-
三鷹市の母娘餓死事件と、違法訪問販売の事件がつながっていく終盤
その過程は、私の読みの甘さからくるとのもあるだろうが
予想外の展開の連続で面白かった。
しかし、その二つの事件が1人の人物に収束する瞬間
これまで大きな広がりを見せていたストーリーが
一気に小さく身近なところに纏まってしまったなぁ
といのが素直な感想。
一応ちゃんと筋は通っているし、この辺りは感想が分かれそうだけど
個人的には一気に収縮してしまった感が否めなかった
(楽しめたけれど… )
そんな本作のエピローグは灰色の景色が続く
事件を解決したからといって
劇的に変わる訳でもない日常
むしろ、懸念事項が増えたような気がする日常
その辺りの描写がひどくリアルで困る
解説の方が名付けた「エグミス」という言葉
それが随所に効いてくる
そんな
どこかスッキリしない、しかし読み進めてしまう。
そんな1冊でした。
-脱線②-
主人公は昭和の事件が好きだという
それは事件事件によりその時代の
世相や雰囲気を感じられる
生きたものであるという感覚があり
それ故に、現代の事件はつまらないという
確かに、昭和時代の事件と現代のそれとは
熱量の差があるようには
資料を読むだけでも何となく分かる
無機質さ、というものを感じる
ならば、その無機質さを一つの個性として
捉えることも現代の事件を分析する上で
必要なのではないだろうか