『タイムマシンのつくりかた』 ロマンを現実に出力する方法-読書感想
ジャンル:科学読み物、SF
色々な物語の題材として有名過ぎる程のタイムマシン
このロマン装置について、旧友のように何となく知ったような気持ちになっている。
しかし、そのメカニズムや製造方法はどこまで迫っているのか?そんな疑問に対する本気の回答が得られる面白いSF本を紹介
感想
タイムマシンを作る事は出来るのか?
どうような方法でタイムスリップするのか?
という内容を、科学的に、ややSF的に検証していく本書
あくまで科学的に、且つタイムマシンという機械装置の魅力を損なうことなく、解説をする
タイムマシンって具体的にはどんな感じ?とていう、漠然とした考えに理論的な根拠と可能性を添えてくれる
タイムマシンという魅力的過ぎる機械
人間、誰でも過去に戻って修正したい
未来の世界を知りたいといった願望があると思う
そんな願望をドンピシャに叶えてくれるのが、タイムマシン
タイムマシンがただのロマン装置でない、罪作りなところは、技術的にそんなもの出来ないと思っていても
理論的に、もしかしたら作れてしまうんじゃないか?という余地を、常に残し続けてくるところだと再確認出来る。
また、出て来る用語がブラックホールとかワームホールとか特異点とか、いちいちカッコいい…
すごく心惹かれてしまうのであった
ブラックホールに蹂躙される観測者
本書で取り上げられる案の一つに
ブラックホールを利用するというものがある
(この時点でカッコ良さが極まる)
しかし、そんなロマン溢れるミッションに挑む幸運な観測者はといえば、特異点に粉砕され、または無限のエネルギーで全焼し
そして、スパゲッティのように引き伸ばされ、そのロマンの代償過ぎる経験をする事になる
要は現実的でない、という事のはずなのに!ここでまた理論的には必ずしもそうではないという言葉がチラチラ視線を送ってくる
やっぱり何か出来そうなんだよなぁ(無数の屍の上からの目線)
案外、タイムマシンのテストパイロットは使命感や野心に満ちたパイロットでもなく、マッドな人達でもなく
死刑囚の新しい就職先になっているかもなぁと、デストピア的な未来を思ったりもする。
提供される様々なパラドックス
タイムマシンに関する内容で、必ず顔を出して来るパラドックス
本書ではその一つ一つに解説と解釈を提示し、その内容がまた感覚として分かるものであるから困りもの
また、そのような矛盾を大きく孕んだタイムマシンなる装置は建造出来ないと主張する
本書のコンセプトを破壊する大胆な説までも取り上げる。
そういった流れを見ていると、タイムマシンとは単に願望やSF的に魅力的な機械だけでなく
パラドックスという検証出来ない疑問から因果律についてまでの科学、そしてこの世界を規律する法則に
挑戦する異端の機械装置といった姿も見る事が出来た。
SFのロマン装置から、世界の規律に挑む装置という、タイムマシンに対する新しい見方を貰った気分
気になった点
- 発売時期的な問題で、本書内の科学は「最新」ではない
- 実際にタイムマシン建造物の道筋を示すものではなく、あくまで可能性と理論の検証
- 内容は幅広くカバーしているが、がっつり突っ込んだものは少ない。広くやや深くという感じ
おわりに
帯にあるように、物理学者が本気で考えたタイムマシンの製造方法とその原理は
一見、現実的でないのに、その実現可能性をチラ見せしてくるのが悩ましい。
そんなタイムマシンの魅力と、SFでおなじみのパラドックスまでを、分かりやすく解説する本書
「タイムマシン」という言葉にビビッとくる人には是非読んでみて欲しい
そんな一冊