『楽園のカンヴァス』 ミステリー×美術はめちゃくちゃ面白い -読書感想
ジャンル:ミステリー、美術
自分が全く触れて来なかった分野について、本を読む事で興味が広がるという事は
ありふれているかもしれないが、実際体感出来ると、世界が広がったようで何か嬉しい。
感想
とある大物コレクターが所有していたルソーの未発表の絵画を巡り、対決をする2人のルソー研究者のストーリー
美術関係の知識がなくても十分過ぎるくらいに面白かったし、その世界に触れる良いきっかけになった感すらある
作品の真贋を巡る
本作のミステリー要素は、ルソーの未発表作品が本物なのか偽物なのか、この作品の由来は何なのか、というところ
それを突き止める度に、登場人物間で交わされる会話や知識の応酬が、単純に興味深くとても面白いし
「ミステリ小説を読むつもりでいたら、美術系の書籍を読んでいた?」と錯覚してしまう事もしばしば
美術の世界に触れる
本筋である、絵画の真贋を突き止めるにも色々な角度からの考察があり、そのやり取りや研究方法は
ちゃんと学問のそれであり、研究分野としての美術というのかな
今まで学校で触れていた美術とは、違う段階にある美術の世界がとにかく新鮮だった!
そして、作品を鑑賞する視点の一つに、その画家の人生を通して見つめるという見方がある事を知った。
本作はこの見方を通して、小説としての面白さも発揮しつつ、どこか感傷的なところがあるのが素敵だ
おわりに
僕は今まで美術関係に興味がなく、本作で登場する有名な絵画のタイトルを見ても、それが思い浮かばないレベル
そんな僕でも本作を通して触れる、キュレーターという職務や美術館の運営、現代の美術研究の世界はとても面白かった。
ミステリ小説といっても、別に人が死ななくても、刑事事件が発生しなくても十分成り立つし面白い
そんなある意味当たり前の事を再認識出来た。
本作に登場する絵画を纏めたサイトもあったので、読む際はそちらもチェックするのを薦めます。