放送禁止歌 無関心は歌を殺す -読書感想
内容紹介とレビュー
ジャンル:ドキュメンタリー
テレビ番組等で放送禁止、自粛規制の
対象とされている歌がある
その歌は、なぜそのような扱いとなったのか
その理由と背景を筆者が関係者への
インタビューを主に、取材した記録
良かった点
- 放送禁止歌について迫っていく過程は、謎解きのような真相に迫る楽しみがある
- 歌詞等も可能な限り掲載されており、自分の目でもそれを確かめる事が出来る
- それぞれの取材に対する明確な目標と、取材による方向性がキチンと書かれているため、分かりやすい
- 読後も頭に残る問題提起
気になった点
- 扱うテーマは同じだが、前半と後半で異なった展開と内容
- 少し鼻につく人もいるかもしれない
- 本書を通して得られる問いかけは、メディア側の人間には必要だろうが、我々一般人がどの程度の影響を与えるのか分からない
感想
[放送禁止歌]
ワード的に都市伝説やオカルトを
一瞬期待してしまうが
そうではなく、歌詞等に不適切な所があり
テレビなどでの使用は自粛される歌謡曲
「なぜ放送禁止歌は放送禁止なのか?」
「放送禁止歌のドキュメンタリーを制作し、放送禁止歌を放送する」
そんな筆者の着眼点が面白い
[本書の持つ二つの顔]
本書は、大まかに二つの内容から構成される
前半パート
放送禁止歌というものを生み出した
構造や理由焦点を当て、取材・調査を進める
その真相に迫る過程は、どこか推理小説のようでもあり、その意外過ぎた結果も含め
とても面白かった。
個人的にはこの前半パートが特に好きだ。
後半パート
前半での活動をもとに、日米メディアの
意識や環境の違い、部落差別問題等を通して
メディア関係者や読者への問題提起をする
本書を読み始めた時は、後半の展開は
予想出来なかった。
それは筆者も同様で、本文中に
「取材を進めていく内に方針が変わって
しまった」と書いている
また、部落差別問題といった点にまで
踏み込むが
かといって、差別問題への参加を
押し付けるといった毛色ではなく
あくまで取材を続けるうちに
辿り着いた一つの地点といったスタンス
全編を通して、取材過程での筆者の考えも
書かれており
その方向性にブレを感じる事はない
ドキュメンタリー撮影のライブ感という物に
触れた気がする
[何が歌を規制するのか]
本書の内容を基に多少極端に突き詰めると
それは我々の無知や無関心という事になる
その歌の背景や歌詞についても知らない
知ろうとしない
規制のガイドラインとして提示されたら
そのまま受け入れてしまう
情報を右から左へ流すだけで
そこで立ち止まって、自分で知ろうと
考えようとしない
そんな思考停止の連鎖の一出来事が
放送禁止歌の中に見える
勿論、そんな事を言われてもメディア
関係者でない
僕ら普通の読書はどうしようもないけど
自分で知ろうとする、考えようとする
これだけでも少しは違ってくるような
そんな前向きな気がこなくもないか?
[まとめ]
本書を構成する二つの内容により
放送禁止歌という問題をよりよく捉え
多角的な面から見る事が出来ているし
何よりダレずに読み進める事が出来る
また筆者がテレビ業界出身という事もあり
番組制作の現場についての環境や
それによる問題点が指摘されているのも
興味深い(あくまで取材当時の、ではあるが)
放送禁止歌という、メディア上での事項を
通して読者の姿勢にも問題提起をしてくる
面白く、考えさせられたが
そのくせ読後の感じは爽やか。そんな1冊
筆者関連書籍