ルポ トランプ王国ーもう一つのアメリカを行く ラストベルトから見た大統領選 -読書感想
ジャンル:新書、ノンフィクション
概要:昨年のアメリカ大統領選挙
トランプへ投票した人々の姿を映す
トランプ旋風やアメリカ大統領選挙を扱った
書籍は本当に山のように出ている中
本書の切り口が新鮮に映る
内容紹介
トランプ支持者とは?
日本でニュースを見ているだけでは
といった漠然としたイメージはあるものの
実際はどんな人達なんだろう
その疑問の1つ解答を見せてくれる
インタビューによる支持者への取材を中心に
現在のアメリカが抱えている問題と
もう一つの旋風を起こした
民主党のサンダース候補にも触れ
今回の大統領選挙の傾向とデータの提示
そして、今後の予測と問題提起
といった内容で
トランプサイドの視点を盛り込んだつつ
大統領選挙の一側面を
物語のような良い意味の軽さと
考えさせられる内容
感想
[トランプ支持者とは]
本書から得られるトランプ支持者の実像は
アメリカファースト主義者でもなく
人種差別者でもなく
日々、真面目に働いているのに
生活が徐々に悪くなっていく
産業が共に街が廃れていく
そんな環境や生活事情で苦悩する人達であった
[一つの希望に惹かれる]
トランプは演説では具体的な言葉語らず
ただ、大きなメッセージを繰り返すだけだと
筆者は指摘している
しかし、実際色々苦悩している時こそ
具体的な手順より抽象的でも
明るさを感じられる言葉に惹かれてしまう
普段生活していてそんな経験もなくはない
むしろ、多くの人がそんな状態になってしまうような
職業政治家に対する不信が蔓延し
アウトサイダーのトランプに託してしまうような
ギャンブル的な選択肢が現れてしまう
今のアメリカ社会の問題が浮き彫りになっている
[トランプはその希望に応えられるのか]
筆者は選挙期間中に見たトランプの性格や
実業家時代の問題を挙げ、難しいとの展望を描いている
僕も、何だかんだでトランプは富裕層の人間であるし
支持者の期待には応えられないのでは、と思う
今後、注目すべき事柄
また、この内容に関しては
著名人のトランプ政権に対する懸念や
民主主義の危機というような記事も抜粋されている
[民主主義とは]
その流れから、民主主義とは何かという問題にぶち当たる
現状に不安な不満のある人々が
その気持ちを代弁し、それを改善すると訴える候補に投票し
世の流れを変える
こう書くと、民主主義がちゃんと機能しているように思える
しかし、実際は民主主義の危機とか
誤った選択をしたかのような印象の報道がされている
(ヒラリーの方が得票数が多かったとか言うのは
そもそも、そんな結果が予想されるような選挙システムを
改善せず採用している時点で意味が無い)
じゃあ、仮にこの選挙の選択が誤りであったとして
そんな誤った選択をさせる候補者が当選するような
民主主義の一つの結果を生み出す原因となる
アメリカの半数近い人が感じる
歪な社会を作って来たのは
同じく民主主義で選ばれた人達でもあり
民主主義って本当に優れたシステムなのかと
疑う事すらしてしまいそうになる
[トランプ政権に対する懸念]
そんな事を言っていても、やっぱり少し先行き不安であって
本書でも様々な懸念が示されているけど
個人的に特に気になったとが
「事実を重要視しない」
ということ
大統領に当選後の今
「フェイクニュース」「オルタナティブファクト」とかいう
ファンクな言葉がニュース番組を見ていても普通に飛び交うこの頃
先の懸念は、何か大事なものである気がしてならない
(フェイクニュースに関しては、言われるメディア側も
責任が全くないとは言えないところはあると思うが)
[まとめ]
正直、トランプとその支持者に関しては
色物のような印象を抱いていた
しかし、大部分のトランプ支持者は
自分の普段の生活に根ざした
それを顧みた、きちんとした考えを持ち
支持をしていた。
インタビューが中心の本書では
その様子が、とてもよく感じられる
ニュースに出てくるような変に過激な人でない
ちゃんとした人々の考えやその環境を知るには
お勧めの1冊
この記事を書いている今のトランプ支持率は37%
入国規制とか早速色々始めたけど
本書に登場したような支持者は何を思うか
続編を希望したい
[以下、雑感]
・食堂やバーで忌憚なく政治を語ったり
誰に頼まれた理由でもないのに
自発的にグッズを作ったり、電話で活動したり
そんな身近に根付いた民主主義の気風が
羨ましくも感じた
・日本に住んでいると移民については
イマイチぴんと来ないところがあるが
ある女性が話していた
「街にはスペイン語が溢れ
看板やスーパーの商品にも英語より先に
スペイン語がある」
という状況を自分に当てはめると
その違和感に気付く
・ある白人男性が言っていた
「政治家は、どの業界の援助を受けているか
分かるように貼り付けておけばいい(F1みたいに)」
という言葉が最高にロックだった