すーさいどは遠い論

タイトルほど過激でない。ゲームと酒とアイドルに溺れる生活ログ(^人^)

天使の囀り 人に薦めるがひどく難しい。でも、オススメ。そんなホラー

ジャンル:ホラー

あらすじ:死恐怖症の恋人を持つ、ホスピスに務める主人公

                    ある旅から帰国した恋人は人が変わったように

                    明るくなるが、ある日奇妙な自殺を遂げる…

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(久しぶり引っ張り出したらカバーが行方不明に…)

 

ホラー小説も、ただ恐怖をもたらす幽霊・怨霊系から

科学・生物学的なものを下敷きにした

「ひょっとしたら本当にあるのかもしれない」

と思わせるようなもの迄、多種多様

 

本書も初めて読んだ時は

「こういうものありなのか」

と面白さと同時に新鮮な驚きがありましたね。

 

感想のようなレビューのような

死恐怖症の恋人とその自殺、多発する奇妙な自殺

どうやら、その自殺者達は恋人と同じ班であったらしい

 

とホラーものの期待を煽ってくる要素があり

その入口は整っている

 

では、それを引き起こした元凶は!?

といった段階になり浮上する問題

 

その元凶こそが本書を人に薦める事をひどく難しくしている

(ようやくタイトルを回収出来た)

 

ホラーって、グロとかスプラッター系とか

人に薦めにくい本って沢山あると思うんです。

でも、それらは事前に忠告が出来ます。

しかし、本書の場合はその忠告したい要素が

一番の要となっているので

例え善意でも即ネタバレを踏み抜くホラーを味わう事に

やんわりと伝えても勘の鋭い人は気づいてしまうんじゃないかな

 

人間が生きていく上でどうしても生まれる不安、恐怖、怒り

もし、そういったものを取り除けるのであれば?

それも、とても簡単な方法で

 

そんな誘惑の行先を、ある要因を使い違和感なく

しかし、日常から静かな狂気へ逸脱していく

ゆっくりと確実に進行してくるホラーです。

 

 

[ネタバレを含む感想]

誰も幸せにならない

本書の物語の結末は一見救われたようであるが

主人公を含め、皆救われてはいない

 

本書は未知の線虫を中心として

外からこの事件を追う主人公達と

内からこの事件に巻き込まれていくフリーターの青年

この2つの物語が進んでいく

 

寄生した生き物が恐怖や不安を感じると

それを快感に転換する働きを

その寄生主の脳内で行う線虫

それは不気味であり、とても受け入れる余地がないけど

それを享受している作中の人物達は苦悩等から

解放されており、人生を満喫しているかに見えてしまう

 

しかし、そう上手く行く訳ではなく

その行く末は

恐怖対象への箍が外れた結果(恐怖すればするほど快感が強くなるため)

自ら率先して恐怖へ近付き、奇怪な自殺へ至るか

線虫の家になるしかない(この描写は実際に読んで欲しいな)

 

恐怖や不安から逃れる方法を

つい安易な形で求めてしまうけど

そんな考えの、一つの狂った終焉を示してくれる

 

読者は、フリーターの青年パートを通じてあらかじめ

真相を知った状態で途中から読んでいくけれど

主人公サイドの謎解きが進んでいくのを

自分の中で答え合わせしながら読んでいくのが楽しい

 

線虫を脳内に寄生させる事で

恐怖や不安から解放されるけど

それは果たして、その人本人なのか 

それとも線虫の操り人形なのか

 

そんな問が最後に提示される

 

ホラーを線虫というものを使って

こういう書き方をするんだなーと思った一冊

 

散々言ってきた人に薦めるのが難しいというのは

線虫(虫要素が)苦手な人はその時点でアウトだし

かと言って、先にそれを言ってしまうと

即ネタバレになってしまうからなのでした。