ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か ディナーパーティの泥酔客に触れる -読書感想
最近よく耳にする、ポピュリズム。
僕は学生時代に公民系や政治学が得意だったので
正直知ったかぶりをしていました。
でも、やっぱり知ったかは落ち着かなく本屋を徘徊した結果
内容紹介
ジャンル:新書、政治
本書は、ポピュリズムの概要を説明しつつ
南米や欧州のポピュリズム政党の活動を
分析と、ポピュリズムの大まかな歴史と
現在との比較を行っています。
なので、僕みたいな初心者には
とても読みやすかったです。
感想
「主な構成」
前半から中盤に掛けてポピュリズム政党の成り立ちから
南米と欧州での主張や行動の比較を行い
とても分かりやすく書かれています。
(比率的には欧州が多いかな)
後半からは、昨年のBrexitからトランプ大統領誕生までの
時事も押さえています。
ポピュリズム政党の良い面や悪い面
また、それが及ぼした影響について詳しく書かれています。
それが行き過ぎてしまう場合の事例もしっかりあり
筆者が中立的な立場に徹する姿勢であることが分かります。
[ポピュリズム政党の印象]
ポピュリズム政党と一括りしても
南米と欧州で傾向が違う。
また、政策面でも過去と今では
反対の事を言っていたりする。
正直「なんだこれ」って思いました。
本文中でも解説がありますが
ポピュリズムは下から上への闘争
要は庶民から政治エリートに対する闘争
だから、政策や主張もその都度変わっていく
もはや、概念のようだ…
[今を生きるライブ感]
今は移民排斥や反グローバリズムを
訴えているけど
もしかしたら、10年後は違う事を
言って支持を集めているかも知れない。
一見すごくテキトーそうでも
ある意味では、既存の政党よりも
市民の側に立ち「生きている」政党にも
見える
ポピュリズム政党の言い分の反対側が
その時の主流
とても分かりやすくていい
もちろん、政党として一つの主義主張が
ある事は必要であるとも思うが
政策の転換を通じてポピュリズム政党自体が
主流となれていない人々の受け皿の一つに
なっている
それも政党機能の一つではないか
[リベラル?デモクラシー?]
現在のポピュリズム政党の
主要な公約の一つに反イスラムがある
一見過激な事を言っているように見える
(僕もそう思ってました。)
しかし、本書を読むとそれが揺らぐ
イスラム教は民主主義的ではなく
男女平等ではない
↓
我々(主に欧米)が基本とする
価値観とは異なったものを持っている
↓
だから、そういう相容れないものを
批判する権利がある
・・・現在のポピュリズム政党の反イスラム政策を要約するとこうなる、という。
理論的に間違ってなくない???
本書でも、だからこそ
現在のポピュリズム政党を論破するのは
難しいと触れられている。
理論的に正しそうな外見を備える事の
強さを得ている
[ではポピュリズム政党は害なのか]
ところが、そうでもないらしい。
事例の一つとして
ポピュリズム政党の拡大により
危機感を持った既存政党の改革を
間接的に促す
それによって政治が活性化した
ことが紹介されている
これだけ見ると
むしろ民主主義の機能に
一役買っている様でもある
民主主義というものをこれからも
本気で維持していくなら
むしろ必要な存在に思える
常に時代の政治に問い掛けてくる
チャレンジャーという視点はどうか
[ディナーパーティの泥酔客]
本書の最後にある
とても印象に残った言葉。
ディナーパーティの会場に
突然泥酔した客が乱入して何か言ってる。
鬱陶しいけど、何かその場では
タブーとされていた事に
ガツガツ意見をぶつけている。
「迷惑だけど、ちょっと気になる」
こういう例えだそう。
悲しい事に、そんな場所に縁遠い僕でも
そう言われると、しっくりくる。
人間っていう(少なくとも僕は)
そういう存在がいたら
多少なり気になってしまうと思う
よくポピュリズム政党を支持する人達を
バガにするニュアンスを含む報道を
見るけど、それは違うと思う
自分達に考えりるなりに考えて
それを体現してくれそうな
候補者なり政党に託す
それも立派な民主主義では?
むしろ、そういった人達を笑うような層が
出来上がっている現代だからこそ
ポピュリズム政党が躍進しているとすら 思う
[どんな人に・どんなポイントかオススメなのか]
- ポピュリズムについて知りたい人
- 僕みたいに何となく知ったかをしてた人
- 既存政党以外のトリックスターを知りたい人
- ポピュリズム政党の歴史がとても分かりやすく易く書かれている
- 現代の時事も扱っている
- 良い点、悪い点が示されている
- ポピュリズムって何?という疑問解消のヒントをくれる
この厄介でもあり
有益でもある泥酔客について
考えてみませんか