『死刑 その哲学的考察』 考えるきっかけであり指針にもなり得る1冊-読書感想
ジャンル:新書
死刑について書かれた本は沢山あるけど、どれも何かイマイチ取っ付きにくい。難しそうだったり
肯定・否定の主張がしんどかったり。本書も人からすれば、そんな取っ付きにくい1冊に入るとは思う。
個人的にタイトルがカッコ良かったのと、単純に中身が面白そうだったという軽い動機で購入
感想
サクサクといかないまでも、ある程度の勢いを持ったまま読ませる内容のある、充実感のある1冊といった印象
読んでいて面白かった。
分かりやすい内容
個人的に、従来の死刑本に持っていたイメージや、タイトルにある哲学的考察という言葉から、読む前は少し構えていた。
しかし、本書は、新書という性質からかそれが杞憂であるかのように分かりやすい易い。
結論ありきでない、問題提起から始まり、どんな考え方や意見があるのか、その反論や過去の事例はどんなものがあるのか
そういった内容が、絶妙なバランスでまとめられていると感じた。
死刑を執行する上で、道徳的にはどうなのか?また、政治的にはどうなのか?
この2つのテーマを中心に据え、肯定派・否定派の両論を記載し解説と反論を行っていく構成は、どちらにも偏らないように
筆者がとても気を付けている事が分かる。僕は何方かと言えば肯定派なんだけれど、筆者のそんな姿勢のおかげか
否定派の意見や、死刑を肯定した際の問題点などを冷静に受け止める事が出来た。
簡単に結論が出るものではない
本書を読み終え、改めてこんなある意味当たり前とも言える感想を抱く
凶悪犯に見合う究極の刑罰として死刑があるのは当然
といった今迄漠然と思っていた事で片付く簡単な話ではなかった。否定派が読んだらどう思うんだろうか
少なくとも、個人的には明確な回答を得たり、自分の考えの確立を目指すタイプの本ではないと感じた。
死刑という事柄に対して考えるきっかけと、その手助けといった感じ。入口的な
その代わりに、本書は何回でも読める。それだけの内容があると思うし、自分の考え方が変わる時々で発見がありそうだなーと
おわりに
本書は新書としてみると厚さがそれなりにあるし、テーマ的にも手に取り難い気がする
しかし、そんな事を気にせずにガンガン読める内容は面白く、刺激的ですらある
また、適度なタイミングでのおさらいや、繰主張に偏りのないようなバランス感覚など、筆者の気遣いも窺える
筆者自身の感覚も、(本文中では)読者側に近い、庶民的で共感出来るもので、好感が持てる
買った動機はともかく、良い本に出会えたのが嬉しい